健康増進法の背景と意義

 

次は健康増進法が制定された背景と意義についてお話したいのですが、その前に、「成人病から生活習慣病へ」、「健康日本21」運動の展開の意義について触れておきたいと思います。

 

昔の結核に代わって脳卒中が死因の第1位となったのが昭和26年、そして「成人病対策」が制定されたのが昭和32年です。この翌年には脳卒中、がん、心臓病などの慢性疾患が死因の上位となってきたのですが、昭和55年には脳卒中、がん、心臓病の3つだけで何と死因の6割を占めるようになったのです。

 

こうした経緯から最近は脳卒中、がん、心臓病などは「生活習慣病」と呼ぶことになりました。こうした病気群が「成人病」から「生活習慣病」へ変わったわけです。

 

もともと成人病の定義は、加齢と共に罹患率が高くなる疾患群や、年をとるとかかる病気で、早期発見と早期治療が重視され、集団検診を社会責任で行っています。しかし、がん、脳卒中、心臓病、糖尿病、高血圧、高脂血症などは、生活習慣の偏り(食事、運動、労働、喫煙、飲酒など)が疾病率を高める病気で、罹患している人達が中高年に多く、社会責任による検診だけにとどまらず、各個人の責任で予防する時代だという認識に立って、これを広く啓発するために「生活習慣病」へと変わったわけです。

 

生活習慣を改善することで予防可能となり、又、予防することで医療費の増加に歯止めをかける狙いもあります。そこから「健康日本21」運動の展開が必要であり、その意義も理解しやすくなると思います。